日本からアメリカへ来て所得があった人は、基本的にアメリカでの所得税申告(Tax Return)が必要になります。
これは日本では確定申告にあたる制度になります。
2023年は4月18日(火)が期限です。(週末と祝日のため。通常は4月15日。)
本日は、提出期限が近づいているこのアメリカのTax Returnについて、お話をしようと思います。
アメリカでの所得税申告(Tax Return)
ビザの種類で例外はありますが、アメリカでは所得が標準控除額(Standard Deduction)と人的控除額(Personal Exemption) の合計を超える場合、全ての人が所得税の申告をしなければならなりません。
所得税の申告に際しては、居住者か非居住者かの区分けが税務上重要な要素となります。
なぜなら、居住者は米国の所得に限らず日本の所得を含め世界ベースでの所得を申告しなければならないのに対し、非居住者は米国だけの所得を申告すればいいからです。
居住者(Resident Alien)・非居住者(Nonresident Alien)の区分
では、居住者か非居住者は、どのように区分するのでしょうか?
居住者・非居住者の区分は、通常は、永住権テストおよび実質的滞在条件テストを適用し、アメリカの税法上居住者あるいは非居住者かを区分します。
永住権テストと実質滞在テスト
例外はありますが、内容をざっくりと説明します。
永住権テスト(グリーンカードテスト)
グリーンカード保持者は、アメリカでの滞在期間とは関係なく、米国市民と同様に、税法上は「居住者」扱いです。居住者だけに与えられる控除などのベネフィットを受けることも可能になります。
実質滞在テスト
就労ビザを持つ方が次の1と2の二つの条件を同時に満たすと、「居住者」扱いになります。
1. 当該暦年中の滞在日数が累計で31日以上であること。
2. 次の(a) (b) (c)の合計が183日以上であること。
(a) 当該暦年中の米国滞在日数
(b) 当該暦年の前の暦年中の米国滞在日数の3分の1
(c) 当該暦年の前々暦年中の米国滞在日数の6分の1
例えば、2022年に120日、2021年に300日、2020年に60日滞在した場合、120+(300 x 1/3)+(60 x 1/6) =230となり、居住者扱いとなります。
特例者(”Exempt Individual”)
外交官(Aビザ)・学生(Fビザ)・専門学校生(Mビザ)・研修生(Jビザ)・交換訪問者(Qビザ)は、特例者(”Exempt Individual”)となり、「非居住者」として扱われます。
渡米・帰日初年度に上記の実質滞在テストの居住者条件を満たさなかった場合も、「非居住者」扱いとなります。
Form8840
アメリカの長期出張などで実質滞在テストを満たした場合で、アメリカ滞在が183日未満で税法上の居住地がアメリカ以外にあることを証明し「非居住者」扱いにするため、提出するFormです。
居住者の税務
上記の区分で居住者となった人は、米国市民と同様に、居住者である期間に受け取った米国源泉の所得に限らず、外国源泉の全所得も含めて米国での所得税の対象になります。
源泉地にかかわらず、給与、利息、配当、事業所得、譲渡所得などの一切の所得を総所得(Gross Income)に含めて申告することになるため、アメリカに居住している日本人でも、日本源泉の所得も含めて米国連邦政府に総所得として税務申告をする必要があります。
また、グリーンカード保持者は、上記のアメリカの滞在期間にかかわらずに居住者になりますので全世界の所得がアメリカで課税の対象となります。
アメリカを離れても全世界の所得がアメリカで課税の対象になりますので、注意が必要です。
グリーンカード以外の移民ステータスの人(ビザ保持者)が日本へ帰国すると、アメリカの居住者でなくなりますので、米国源泉以外の所得はアメリカで申告する必要はありませんが、グリーンカード保持者は、日本の所得もアメリカで報告しなければなりません。
アメリカから帰国後もグリーンカード保持者は、日本の所得を日本とアメリカで税務申告することになります。
二重課税になる可能性がありますが、その対策として、海外役務所得控除(Foreign Earned Income Exclusion) と外国税額控除(Foreign Tax Credit)が利用できます。
この控除が認められる所得は、労働の対価として得た所得(Earned Income)だけですから、利息や不動産賃貸収入、譲渡収入などは控除の対象にはなりません。
外国税額控除は、日本で課税された所得に課税される連邦税から日本で支払った税金額を差し引いて支払うことができる制度です。
非居住者(Nonresident Alien)の税務
非居住者は、アメリカでの源泉所得の内で、米国関連所得(”Effectively connected U.S. Source Income”)だけが課税の対象となります。
この米国関連所得とは、アメリカでの給与所得や事業所得などの役務の提供の対価として発生した所得や、米国の不動産の売買や賃貸により発生した所得のことであり、所得が発生した翌年の4月15日までに、1040NRというフォームを使い所得税の申告をする必要があります。
これらの申告が必要な所得以外は、非米国関連所得(Non-effectively connected U.S Source Income)とされ、源泉徴収の対象となります。
非米国関連所得はこの源泉徴収税により課税が完結するので、税務申告をする必要はありません。
この非米国関連所得とは、米国内の金融機関などから受け取る利息・米国会社からの配当・特許や著作権のライセンス料などが含まれます。
この源泉徴収方式には、通常、FromW-8を使用して行います。
また、税務申告に際しては、居住者でも非居住者でもSocial Security Number (S.S.N)が必要ですが、現在SSNは労働ビサを所持している人にしか発行されていませんので、米国歳入長から納税者番号(Tax ID)を取得する必要があります。
まとめ
アメリカの所得税申告の期日は、今年のように週末や祝日と重ならない限り、通常は毎年4月15日です。
アメリカ市民で子供もおらず、勤務先が一つで財産を持っていないなどのシンプルなケールなら、申告はさほど難しくはないでしょうが、ビザのスタータスが絡むだけでも、申告内容は複雑になります。
その上、税務申告内容のミス・申告漏れ・遅延などあると、ただでさえややこしい税務申告がさらにややこしくなってしまいます。
ご存じかと思いますが、やむを得ず申告が遅れる場合は、届け出が必要です。
間違ったりこじれたりしたものを後で修正するには、思った以上の時間と労力がかかるものですし、まれですが、税務局が間違っていることもあります。
そうならないためにも、所得税申告はできるだけ早めに、専門家を通して申請することをお勧めします。
上記を含め、このブログで記載する法律に関連する内容に関しましてはすべて、米国移民専門の堀隆幸弁護士にご確認いただいております。お含みおきください。
本日もブログをお読みいただきまして、ありがとうございました。
参考文献:West Federal Taxation, Income Tax Fundamental-Thompson South-Western
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